【出版作品紹介】泣き虫メイドとご主人様

ナイトランタン関連サイト登録作者:桐野りのさんの電子書籍の紹介です。

・作品名 泣き虫メイドとご主人様
・作者名 桐野りの
・イラストレータ 中田恵
・発売日 2016年5月17日
・販売価格 432円(税込)
・購入方法 ロマンスブックカフェ、Kindleなど各電子書籍サイトにて配信中。
http://www.romancebookcafe.jp/book/novel/id/c88569

・出版社 夢中文庫
・レーベル 夢中文庫クリスタル

・内容
兄の借金返済のため富豪・西園寺貴一のメイドになった彩月。待遇はよく指導係の執事は優しく最高の職場…雇い主、貴一のセクハラを除いては。気弱な彩月にセクハラはエスカレート。とうとう初キスを奪われてしまった。思い切ってやめるよう訴えると事態は悪化。唯一の味方老執事は解雇、彩月は貴一に襲われてしまう。「本当のセクハラってもんを、今からお前に教えてやるよ」意地悪な囁きに震え上がる彩月。でも貴一の巧すぎる愛撫に身も心も蕩けてしまう。ご主人様はわたしをからかってるだけなのよ。本気になんかならないんだから……!と言い聞かせるも胸のトキメキは止まらない。泣き虫メイドとドSな富豪のキュートでホットなラブロマンス。


・その他伝えたい事
試し読み

「ご主人様、お茶をお持ちいたしました」
 太田彩月は大きく深呼吸をして、木造りの重厚なドアをノックした。
 返事はないが中から人の声はする。
「……先月の売り上げは三百か。まあまあだな。けどもう少し攻めてみてもいいんじゃないか?」
 どうやら会議中らしい。
「失礼します」
 彩月は小声で声をかけると、ドアを開け書斎へと足を踏み入れた。
 彩月のご主人様こと西園寺貴一は、窓を背にしたデスクにつき、壁にかかった大きなモニターに向かっていた。
 よわい二十九歳にして、日本を代表する財閥西園寺グループの長である彼は、屋敷内にあるこの書斎を仕事の拠点とし、世界中に散らばる社員やクライアントとネットを介してコミュニケーションをとっている。
 ワーカホリックな彼は、今もモニター越しの会話に夢中になっていて、彩月の存在に全く気づいていない。
(……お茶を置いてさっさと帰ろう)
 彩月は半ばほっとしながら、広いフロアを横切った。
 大窓から忍び込んできた初夏の風が、西園寺の長すぎる前髪をはらい、秀でた額があらわになった。
 昼下がりの日差しが、西園寺の彫刻みたいに整った横顔に、柔らかくまとわりつき、彩月はその美しさに思わず見とれた。

(神様は、きっとご主人様に、うんと綺麗な見た目と冴えた頭を与えて、その代わりに性格を捻じ曲げちゃったんだわ……)

 そんな考えがふとよぎる。

「まあ、新店舗のプロデュースは全面的に任せるから、好きにしろ。それより例の件だがな……お、なんだお前」
 西園寺はやっと彩月に気づいたらしく、ぎょっとしたように眉根を寄せた。
「あの……お茶をお持ちしました……」
 思いもよらぬ西園寺の反応に、彩月はピクリと硬直した。
 ウェブカメラの位置は把握しているから、自分が映り込まないように注意を払っていたつもりだった。
 だけど西園寺にとっては、十分空気を読まぬ行動だったらしい。
「悪い。また後で連絡するわ」
 西園寺は再びモニターに向かうと早口で言った。
 アロハシャツを着た男性が、片手を上げる。
 真っ黒に日焼けしているため、日本人なのか外人なのか、彩月には判別できなかった。
 接続を切ると、西園寺は鋭い目で彩月を睨んだ。
「今の話、聞いたか?」
「いいえ、たいしたことは何も」
 彩月は戸惑いながらそう答えた。